03.あの頃の個人サイトの風景



●はじめに

インターネットには、いつの間にか見なくなったものがたくさんある。

アクセスカウンター、キリ番、相互リンク、リンク集、WEBリング、同盟、掲示板、チャット、素材屋、隠しページ。

サービスそのものが終了したものもあれば、仕組みとしては今でも作れるのに、文化としてほとんど見かけなくなったものもある。

今回は、そんな「消えていった風景」をいくつか振り返ってみたい。


●アクセスカウンターとキリ番

昔の個人サイトでは、トップページにアクセスカウンターが置かれていた。

「あなたは〇人目のお客様です」という、あれである。

そして5000、10000などの区切りのいい番号や、

12345のような連番、

「555」のようなゾロ目でちょうどアクセスすることを

キリ番を踏むと呼んだ。

本来はアクセス数を視覚化するためだけのものだが、

一定の管理人はそこに報告を義務化した。


キリバンを踏んで報告をしないことを掲示板荒らしの次に重い罪とし「踏み逃げ厳禁」と告知した。

当然のように踏み逃げはされていたが、律儀に報告をするユーザーも少なくなかった。


報告をするとイラストサイトでは記念の絵を描いてもらえることもあった。


今でも閲覧数やフォロワー数など目に見える数字は存在する。しかし同じ数字を見るという同じ行為でも、

ホームページのアクセスカウンターはどこか牧歌的で、

競争のための数字というより、自己記録を更新する感覚だった。


●掲示板・チャット

個人サイトには掲示板やチャットがよく設置されていた。

サイトを見た感想を書く人もいれば、管理人と雑談する人もいる。そのうち常連同士が話し始めることもあった。


当時は、メールアドレスでも交換しない限りそのサイトへ行かなければ交流することができなかった。

小さなコミュニティが存在していたのである。

(お絵描き掲示板やお絵描きチャットというイラストがブラウザ内で書ける掲示板も存在した。)



●相互リンクとリンク集

気に入ったサイトを自分のサイトで紹介する「リンク集」も定番だった。


「こちらからリンクしました」

「ありがとうございます。こちらからもリンクします」


と、お互いのサイトをリンクする「相互リンク」も盛んだった。


検索結果やおすすめから次のページへ移動する現在とは違い、誰かの個人サイトに置かれたリンクから、また別の個人サイトへ移動する。


リンク集には管理人の趣味がそのまま現れていた。

今でいう「おすすめ」だったのかもしれない。

それを選んでいたのはアルゴリズムではなく人間だった。


●同盟

「○○好き同盟」のようなものも数多く存在した。

参加すると自分のサイトに小さなバナーを貼る。


「私はこれが好きです」


それを表明するためだけにバナーを貼る。

今ならプロフィール欄に一言書けば済むことだが、わざわざ画像を保存し、HTMLを書いて自分のサイトに貼っていた。

その手間も含めても所属欲を満たせ、交流ができるメリットがあった。


●素材屋

個人サイト制作が流行りなら、需要の関係でホームページを作るための素材を配布する個人サイトもたくさんあった。

背景画像、ボタン、アイコン、区切り線、アクセスカウンター用の数字、掲示板用の画像、GIFアニメ。


今ならAIで容易に用意できるが、

当時はそこそこの質の画像ファイルを作り出すということは容易ではなかったのだ。



●工事中

これも立派なインターネット文化だったと思う。


メニューをクリックすると、「このページは現在工事中です」

とだけ書いてある。数か月後に訪れても工事中である。


やはり流行りなのだろう、決まって工事中と表現していた。


今なら完成してから公開すればいいと思ってしまうが、昔のホームページは未完成でも普通に公開されていた。

ホームページは完成品というより、少しずつ増築していくものだった。

恐らく、伝えたいことはあるからまた来てねという表明だったのだろう。


●隠しページ

サイトのどこかに、わざと分かりにくいリンクを置いた「隠しページ」もあった。

背景とほとんど同じ色の文字だったり、小さな画像が入口になっていたりする。


見つけたからといって、特に有益な情報や背徳感のある情報もなく

管理人の日記だったり、落書きだったりする。

それでも探した。


個人サイトの楽しみは情報そのものだけではなく、

サイトの中を歩き回ること自体にあったのである。


●その他

ほかにも、右クリックすると「右クリック禁止です!」と怒られたり、ページを開いた瞬間にMIDI(音楽)が流れたり、

トップページの前に「ENTER」だけの入口が用意されていたり、「Sorry, Japanese Only」と書かれていたりした。


文字が横に流れるマーキーや、点滅する「NEW!」、カーソルを星や文字が追いかけるマウスストーカー、マウスポインターそのものを変更するサイトもあった。


必要だったのかと聞かれると困るものも多いが、そうした仕掛けを好き勝手に詰め込めたことも、個人サイトの面白さだったのだろう。


●おわりに

ここで挙げたものの多くは、技術的にできなくなったわけではない。

アクセスカウンターも置ける。

掲示板も自作できてしまう。

文字はギラギラに点滅させられるし、

猛スピードで右から左に流すこともできる。

ただ、かわりがある。だから数を減らしている。


考えてみれば文化とは、工夫の積み重ねといえる。

工夫したものを誰かが真似する。

いつの間にか、みんながやっている。


そして気がつけば、それが文化になっている。

便利になった現在のインターネットから振り返ると、そんな遠回りもなかなか面白かったように思う。

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