「暇だなあ」と思うことがある。
何もすることがない。退屈だ。時間を持て余している。
しかし考えてみれば、「暇」というのはずいぶん贅沢な状態なのではないだろうか。
基本的に野生の生物は、生きるための行動を続けている。
食べ物を探す。敵から身を守る。眠る。繁殖する。子を育てる。
もちろん動物にも何もせず休んだり、遊んだりする時間はある。しかし、人間のように「やらなければならないことは特にない。さて、何をしよう」と考えられる時間を、これほど大量に持つ生物は珍しいのではないだろうか。
人間もかつては、生きるために多くの時間を使っていた。
食べ物を手に入れ、寒さをしのぎ、安全な場所を確保する。
それが文明や技術の発達によって少しずつ効率化され、生きるために必要だった時間の一部が余るようになった。
その余った時間が「暇」なのかもしれない。
そう考えると暇とは、生きることだけに時間を使わなくてもよくなった、人間の余裕である。
映画、音楽、ゲーム、漫画、スポーツ、旅行、動画配信。
エンターテインメント業界は、人間に生まれた「余った時間」を楽しませることで巨大な市場になった。
考えてみれば面白い。
生きるために必要なものではなく、生きること以外に使える時間が生まれたことで、それを満たすための産業まで生まれたのである。
暇を持て余すことができる。
それ自体が、人間を人間たらしめるモノなのかもしれない。